LPの言葉を、3分の1まで削る話
LPを作るとき、最初に書いた文章を、たいてい3分の1まで削ります。なぜそんなに削るのか、その作業の手触りを書いてみます。
LPを作るとき、最初に書いた文章を、最終的に3分の1くらいまで削ることが多いです。
これは毎回そうで、わたしの中ではひとつの仕事のリズムになっています。今日はその、削る作業のことを書いてみます。
最初は、たくさん書く
最初の段階では、わざとたくさん書くんです。
お客さまから聞いたエピソード、現場で感じたこと、お客さまが言わなかったけど、たぶん大事な部分。それを、頭に浮かんだぶんだけ全部、いったん書き出す。
たとえばhaluta houseのLPの最初のドラフトは、6000字くらいありました。最終的に出したのは、たぶん2000字ちょっとです。
なんで削るのか
なんでそんなに削るかというと、たぶんお客さまにとっていちばん大事なのは、「全部わかってもらうこと」じゃないからなんです。
LPに来た人が、最初に思うのは「これ、わたしのための場所かな?」という、ふわっとした感触です。
その感触を作るのは、文章の長さじゃなくて、選ばれた一行だったり、写真の温度だったり、最初に目に入る言葉のリズムだったりするんですよね。
長い説明は、たぶんその感触を邪魔してしまう。
削るのは、書くより難しい
書くより、削るほうが、たぶん5倍くらい時間がかかります。
「これは大事」「これは惜しい」「これは捨てられない」と思っている文章を、ひとつずつ「これは無くてもLPは伝わるか?」と問い直していく作業なんです。
たいてい、3割くらいの文は「無くても伝わるな」となる。そこから、さらに「もうちょっと短く言えるな」を繰り返して、最後に3分の1まで残る。
これは、地味だけど、ものすごく頭を使う作業です。
どうやって削るか、具体的に
具体的にどうやっているか、簡単にだけ書いておきます。
1つ目。書いた文章を声に出して読みます。読みながら、自分の口に引っかかる部分に線を引く。
2つ目。線を引いた部分を、いったん全部消します。消したあと、本当に必要な情報だけ、別の言葉で言い直す。
3つ目。1日寝かせます。次の日の自分が読んでも「これは要る」と思えた部分だけ残す。
これを2〜3周まわすと、だいたい3分の1まで降りてきます。
削った3分の2は、どこに行くのか
「じゃあ、削った3分の2はムダだったの?」と思うかもしれません。
これが、ぜんぜんムダじゃないんですよね。
削った文章は、「お客さまとの打ち合わせの中で出てきた、自分が深く理解するための材料」として、ちゃんとわたしの中に残ります。
その理解があるから、最後に残った3分の1の言葉が、ちゃんと芯のある一行になる。表面に出ていない部分が、出ている部分を支えている感じです。
言葉が少ないLPは、強い
ふりかえって思うのは、本当にいいLPって、たいてい言葉が少ないんですよね。
たくさんの言葉で説明しているLPは、書き手が「足りないかも」と不安になっていることが多い。逆に、たった一行で世界観が伝わるLPは、書き手がそのお店のことを、骨の髄までわかっている。
削れる人は、わかっている人。
そう思いながら、毎回、書いて、寝かせて、削って、また書いて、をくり返しています。
ことばが減って、伝わるが増える
LPを作る仕事って、たぶん「言葉を増やす仕事」じゃなくて、「言葉を減らす仕事」のほうが本質に近い気がしています。
3分の1まで削ったあと、残った言葉だけが、ほんとうにそのお店の言葉になる。お客さまが「あ、これ、わたしのことをちゃんとわかってくれてる」と思える、最後の一行になる。
ととのえるって、たぶん、そういう作業のことだと思っています。